はじめに
こんにちは。元住宅営業マンまめおやじです。
地震大国ニッポン。マグニチュード6以上の地震が毎年のように発生している今、「地震に強い家」は住宅計画の必須条件です。
とはいえ「耐震等級」や「制振装置」など、専門用語が多くて難しいと感じる方も多いはず。
本記事では、元住宅営業マンの視点から、「どこまでやれば安心できるのか?」「どこにお金をかけるべきか?」をわかりやすく解説していきます。
- これから家を建てる人
- 地震リスクの高いエリアの人
- 地震対策を強化したい人

1.地震に対する3つの建物の対策方法
耐震、免震、制震は、地震に対する建物の対策方法であり、それぞれ異なる仕組みと特徴があります。
- 耐 震:建物を強くする
- 免 震:地震の揺れを建物に伝えない
- 制 震:建物の揺れを吸収する
1.耐 震:建物の強度を高くして地震の揺れに耐える構造
- 仕組み:建物の柱や梁などの構造体を強くすることで、地震の揺れに耐える
- メリット:コストが比較的安く、工期も短く済む
- デメリット:上の階ほど揺れが大きくなる、家具の転倒などによる事故が起こりやすい、繰り返しの揺れに弱い
2.免 震:建物と地盤の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝えない構造
- 仕組み:基礎と建物の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝えない
- メリット:地震による揺れが小さく、家具の転倒などを防ぐことができる
- デメリット:コストが高く、歴史が浅い。
- 建物が動くため、比較的広い土地が必要
- 軟弱地盤では設置できない等設置条件が多い
3.制 震:ダンパーなどの装置を設置し、建物の揺れを吸収して揺れ幅を小さくする構造
- 仕組み:ダンパーなどの装置を設置し、建物の揺れを吸収して揺れ幅を小さくする
- メリット:建設コストが安く揺れに強い、メンテナンスが容易
- デメリット:装置の設置場所や数が効果に影響する、地盤の影響を受けやすい
地震対策は、これらの構造を単独で使うだけでなく、組み合わせることでより効果的な対策が可能になります.
例えば、耐震と制震を組み合わせることで、建物の強度を高めつつ、揺れを吸収することで、地震による被害を最小限に抑えることができます.
2. 【基礎知識】耐震等級ってなに?

耐震等級とは、建物がどれくらいの地震に耐えられるかを示す指標で、1〜3までの等級があります。
- 耐震等級1:建築基準法で定められた最低限の基準。震度6強〜7程度の地震で倒壊・崩壊しない。
- 耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の耐力。学校や避難所などの公共施設で求められるレベル。
- 耐震等級3:耐震等級1の1.5倍の耐力。消防署や警察署など、災害時に機能維持が求められる建物レベル。
耐震等級3を取得することで、建物の安全性が高まり、地震保険の割引や住宅ローンの優遇(例:フラット35)を受けられることもあります。
3. 住宅性能表示制度で耐震等級3を取得するには?

住宅性能表示制度を通して耐震等級3を取得するには、所定の「構造計算書」や「設計図書」に基づいた審査・評価を受ける必要があります。
専門の評価機関による認定が必要となるため、設計段階から対応する必要があります。
メリット
- 地震保険料が大幅に割引される
- フラット35で金利優遇を受けられる
- 建物の資産価値が高まる
- 長期優良住宅の認定要件をクリアできる
デメリット
- 構造設計費や申請費用が追加でかかる
- プランの自由度が多少制限される場合もある
4. 「直下率」とは

「直下率」とは、2階の柱や壁が1階の柱・壁とどれだけ一致しているかを示す割合です。
直下率が高いほど、地震の揺れを効率よく基礎に伝えることができ、倒壊リスクが下がります。
- 柱の直下率:60%以上が理想
- 壁の直下率:70%以上が理想
直下率と耐震等級はそれぞれ独立した概念です。
直下率は建物の構造的なバランスを、耐震等級は建物の耐震性能のレベルを表します。
直下率は建築基準法で定められたものではなく、耐震等級の取得に直接関係はありませんが、高めることで地震に強い家作りにつながります。
直下率と耐震等級の関係
- 直下率は、耐震等級の取得に直接影響しませんが、耐震性能を高めるためには重要な要素の一つです
- 直下率が高い家は、構造的なバランスが良く、地震に強い傾向があります
- 直下率の低い家は、耐震等級が高くても倒壊する可能性があります
- 直下率を考える際には、壁量のバランスも重要です
- 熊本地震では、耐震等級2の家でも直下率が低いことで倒壊した事例がありました
結 論
耐震等級と直下率はどちらも地震対策として重要です。
耐震等級を高めることはもちろんですが、直下率を考慮することで、より地震に強い家を建てることができます。
住宅を建てる際には、耐震等級と直下率の両方を検討し、地震に強い家作りを心がけることが大切です。
5. 木造?鉄骨?RC?構造ごとの耐震性の違い
建物の構造によって、耐震性能やコスト、メンテナンス性に違いがあります。
構造 | 特徴 | 耐震性 | コスト感 |
---|---|---|---|
木造(在来工法・2×4) | コスト◎/設計自由度高め | △〜○ | 比較的安い |
軽量鉄骨造 | 工場品質でばらつき少ない | ○ | やや高め |
鉄筋コンクリート造(RC) | 非常に頑丈/遮音性も◎ | ◎ | 高額 |
ただし、同じ構造でも設計や施工の質によって耐震性は大きく変わります。
構造だけで判断しないようにしましょう。
6. 構造計算には3種類ある
住宅の耐震性能を設計する際には、「構造計算」が必要です。以下の3種類があります。
- 仕様規定(簡易計算):木造2階建てまでならこれでOK。ただし耐震等級3は取りにくい。
- 性能表示計算:住宅性能表示制度に基づく構造の安全性を示すための計算。建築士が計算し、性能評価機関がチェックします。
- 許容応力度計算:力の流れを科学的に検証する詳細な計算方法。耐震等級3の取得に必須で、鉄骨造や3階建てにも対応。
許容応力度計算は費用がかかりますが、その分信頼性も段違いです。
7. 「制振装置」を使えばもっと安心?
最近の住宅では「制振装置(ダンパー)」を取り入れるケースも増えています。制振装置は、地震の揺れを吸収・分散し、繰り返しの揺れにも強くなるというメリットがあります。
主な種類:
- オイルダンパー
- ゴム系ダンパー
- 金属系ダンパー
耐震等級3+制振ダンパーの組み合わせは「最強クラス」ともいわれています。
地震が多いエリアでは検討の価値ありです。
8. 費用対効果で考える「耐震強化」
耐震性能にかける費用はざっくり以下のイメージです。
内容 | 費用目安 |
許容応力度計算 | 20〜40万円 |
耐震等級3取得(住宅性能評価費含む) | 30〜60万円 |
制振ダンパー設置 | 30〜70万円 |
全てやると100万円を超えることも珍しくありません。
家族構成や立地条件、予算とのバランスを見ながら「必要な耐震対策」を選びましょう。
9. 地震保険は入るべきか?
どんなに耐震対策をしても「絶対に壊れない家」は存在しません。
万が一に備えて、地震保険の加入も検討しておきましょう。
- 建物と家財に対して補償
- 耐震等級が高いと保険料が安くなる(最大50%割引)
ただし、地震保険は「実損額」ではなく「震定割合での支払い」となるため、補償内容をしっかり確認してから加入しましょう。
10. 元住宅営業マンが自宅で選んだ耐震対策は?

- 平屋:耐震を考慮してというより、総合的に平屋を採用しました。
- 制震装置:メーカーの説明を聞いて、平屋にも有効であると聞いたので採用しました。
- 地震保険:地震リスクの高いエリアでなく、元々加入していなかったのですが、大きな地震がそう遠くない場所で地震が頻発したため、加入しました。
まとめ:地震に強い家をつくるために必要なこと
「耐震等級」や「直下率」、「構造計算」や「制振装置」など、地震に強い家づくりには様々な知識と判断が必要です。
全てを完璧にするのは難しいかもしれませんが、「命を守る」「資産を守る」ために、できる範囲で最善の選択をしておくことが大切です。
将来的なリスクを減らすためにも、設計段階から耐震性能をしっかり考えてみましょう。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
貴方にとって良い一日を~まめおやじ

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